大会長挨拶

テーマ:マルトリートメント・神経発達症と子育て支援〜臨床と研究のかけはし〜

今回、大会の主テーマを『マルトリートメント・神経発達症と子育て支援』といたしました。国内の動向として、児童虐待防止のための法改正案が本年6月に可決され、親権者などによるしつけ名目の体罰等の禁止や、児童相談所の体制強化が柱として組み込まれました。

ご存知のようにマルトリートメントは、家庭、学校、地域などの環境で発生し、それを受けた子どもたちは、感情や行動のコントロールが苦手となり、神経発達症との鑑別が問題にされてきました。また、神経発達症のある子どもはマルトリートメントを受けやすいことがあり、二次障害など複雑化した問題に対して、医療のみならずあらゆる職種の方々の中で、マルトリートメントがもたらす問題への関心が高まってきています。加えて、児童虐待防止のためには、親(養育者)の抱える問題解決が極めて重要ですが、日本では養育者支援が十分とは言えない現状があります。その背景には、家族に子育てやケアを大きく依存する日本の社会制度、及び児童虐待の発生メカニズムの科学的根拠に基づく理解不足が存在します。

少子化・核家族化を背景に、養育者の身近に悩みを相談できる相手がいないなど子育ての孤立化が問題視される中で、子どもが安心して暮らせるために、親子を支える保育士や幼稚園・学校の教員、小児科や産婦人科、精神科、心理士などの医療スタッフ、さらに地域の保健・福祉職員や近隣の人々など、様々な分野からの協力が必要です。本大会では、マルトリートメントの概念、診断、治療、予防、子育て支援にも視点を拡げて議論を進め、検討を深めていきたいと考えております。

福井の地で、子どもに関わるあらゆる職種のみなさまの多くのご参加を心よりお待ちしています。

第122回 日本小児精神神経学会 大会長
友田 明美

福井大学子どものこころの発達研究センター